コラム

[2019-2020年版] 営業店におけるハラスメント対策

営業店のハラスメント対策

執筆者
株式会社オフィシア代表
原 美聖

職場におけるハラスメントは、従業員の働く意欲を削ぎ、生産性を下げてしまいます。従業員のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼし、帰属意識の低下を招き、離職率も高まります。個人の尊厳や人権、名誉といった当たり前の権利が守られず、個人の権利よりも利益が最優先という経営はもう成り立ちません。2020年4月のパワハラ関連法施行後は、ハラスメントの意識が高まり相談件数が増え、混乱が起こることも予測されます。

以下で、営業店でできるハラスメント防止対策をまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。

 

■ハラスメント撲滅の意思表明

ハラスメント防止のスタートは、部店長自らが「ハラスメント撲滅の意思表明」を行うことから始めましょう。ハラスメント防止が今後の発展成長に欠かせない最重要課題であり、徹底的に対策に取り組むというメッセージと方針を発信することです。部店内での方針が明確になることにより、従業員間で相手を尊重し合いながら業務を行うことが当たり前の姿だという認識が育まれ、ハラスメントに関する意識を高めることができます。

 

■トップのメッセージ

営業現場におけるトップからのメッセージは非常に大切です。次の要素を取り入れ、自らの言葉で発信しましょう。

・部支店として、ハラスメント対策に取り組む

・トップ自らハラスメント対策に取り組む  

・今年度、重点的にハラスメント対策に取り組む

・従業員の意識向上を求める

・ハラスメントは重大な人権侵害であり、人権を尊重する

・ハラスメント行為は許さない、ハラスメント行為は見過ごさない

・ハラスメント行為をしない、ハラスメント行為をさせない、放置しない

・ハラスメントがあったら相談をしてほしい 

・相談者等に不利益な取り扱いをしない  

・相談者等のプライバシーは守る

 

■意識改革

職場でのハラスメント対策として、次に重要なことは、従業員の「意識改革」です。ハラスメントの防止対策としては、個人の人権より利益や成績が優先されるという利潤最優先の考え、利益さえ上がれば、営業成績さえよければ何をしても許されるという誤った意識を撤廃することです。

ハラスメントにおいては、行為者に加害者意識が薄いことも特徴です。行為者からのヒアリングで必ず出てくる言葉が、「そんなつもりはなかった」です。その言動がハラスメントであることを伝えると「昔は普通だった」「自分も厳しく指導を受けたから同じようにやっているだけだ」になり、「それが今の役に立っている」という弁明になっていきます。これに対しては部店長自らが「そのような言い訳は許さない」というメッセージを発信することが必要です。

 

■当事者意識

自分の言動を振り返って気をつけると同時に、従業員全員が、働く職場は自分たちが作るという「当事者意識」を持つことも大切です。

①自分がハラスメント行為をしない

2020年4月にはパワハラ関連法が施行予定ですので、パワハラ、セクハラ、マタハラ、SOGIハラ (Sexual Orientation and Gender Identity ハラスメント、性的思考と性アイデンティティーに関するハラスメントの意味)などのハラスメント行為者は懲戒処分の対象になります。ハラスメントは懲戒処分になる位の行為だとを肝に銘じて、これまでよりも自分の言動に責任を持つことが重要です。

②ハラスメント行為を受けないこと、受けた場合は必ず相談する

ハラスメント行為を受けないためには、その場で伝えること、特にセクハラはその場で断る勇気を持ちましょう。ただ、パワハラなどは職場における職位の関係もあり伝えられないかもしれません。よって、受けた場合は、信頼できる人に相談することが大切です。その際、メモなどの記録を残しましょう。

③周囲の従業員もハラスメントの行為が見受けられた場合は見て見ぬふりをしない

ハラスメントが起こらない風土を全員で作ることが基本です。注意や通報をしても、不利益がないことを周知する必要があります。例えば、酔って女性の肩に手を回している職員がいたら、「それはセクハラです」と止める、暴言や居残り残業を強いられている後輩を目にしたら「その言動はパワハラになると思います」と指摘できるようにしましょう。特に管理職には、従業員の心身を健康な状態で働かせる「安全配慮義務」がありますので、見過ごさず対応しましょう。

 

■従業員アンケート

従業員を対象にしたアンケート調査は、ハラスメントの実態把握、部支店の姿勢の表明、従業員へ知識の提供、ハラスメント行為の抑制などにおいて有効な手段です。アンケートは無記名で行います。ハラスメントが起きる組織風土の把握ができますので、今後の防止策の検討材料としても使えます。アンケートの対象は、部支店の全従業員とすることが望ましいですが、派遣職員がいる場合は、派遣元の了解を得るなどの配慮は必要です。

 

■正しい知識

従業員間でハラスメントの認識が異なっていては、「こればハラスメントだ」「いや違う」と混乱するばかりです。ハラスメントの正しい知識を学ぶため、研修などを通じた啓発活動が有効です。

まずはハラスメントの行為者になりやすい管理職に向けて、次いで全従業員向けに実施しましょう。意識の浸透のためには一度限りではなく、朝礼での訓示、Eラーニング、などを用いて啓発活動を行い、それが当たり前だと意識が変わるまで実施しましょう。

 

■研修・勉強会

従業員にイントラネットの教材を案内し、「読んでください」では従業員の意識は変わりませんし、ハラスメント対策への上層部の意識はその程度かと反発、失望されるだけです。また、ハラスメントの法令は年々新しくなりますので、管理職には定期的(年1回は実施)に、最新情報、法令、裁判例、事例、組織対応、相談対応、などを学ぶ必要があります。一般職、非正規職員は、2、3年に1回位の頻度でハラスメントの基本や事例の学習が望まれます。ハラスメントが起こりやすい酒席が増える年末や年度初め、法改正のタイミングで、外部講師を招いてハラスメント防止研修を実施するのも効果があるでしょう。

なお、ハラスメント対策に関する当社へのお問い合わせはこちらからどうぞ

 

■意見交換・ディスカッション

従業員が意見を交換できるディスカッションの場を設けることも効果的です。

例えば、定例会議の後、半年に1回は「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」「SOGIハラ」「人権啓発」「女性活躍」「働き方改革」「ワークライフバランス」…のテーマを盛り込み、意見を交換し合います。他人の意見に耳を傾け、自分の意見を伝えることで、ハラスメントに対する意識を変化させ、気づきを得られるようになります。そして、職場の風土も風通しの良いものに変化していきます。

 

■ポスター/リーフレット

「NO ハラスメント」のポスターの掲示やリーフレット配布も効果的です。具体的なハラスメント言動を表記したA4チラシを複数バージョン作り、定期的に配布することも効果的です。

 

■毎朝の朝礼で「ハラスメント防止」を唱和

「クレド(信条)カード」や「ハラスメント防止に関する小冊子/リーフレット」を毎日の朝礼で唱和することも効果的です。ハラスメントのチェックリストの項目を皆で読み合わせてもよいでしょう。

 

■コンプライアンスカード

ハラスメントの意識の醸成と相談窓口の周知のために名刺サイズの「コンプライアンスカード」を作成して、従業員全員に配布することも効果的です。表にコンプライアンスやハラスメント項目を記載し、裏面に相談窓口や通報窓口、緊急時の連絡先などを記載します。定期や財布、社員証などに入れて常に携帯してもらうようにするとよいでしょう。

 

■メールマガジン

定期的な「ハラスメント防止メールマガジン(メルマガ)」での啓発も効果的です。例えば、ハラスメント防止担当者を決め、持ち回り(3か月程度)で発信する、というような発行が望ましいです。

 

■ハラスメント防止月間

例えば、年に2回(例えば6月と12月)のハラスメント防止月間を設定し、「ハラスメント防止」を宣言し、ポスター、リーフレット、研修、Eラーニング、朝礼、会議などを通して、意識の浸透を徹底する、といった方法も効果的です。

 

■コミュニケーション

①「ありがとう」が飛び交う職場

仲間への「敬意」を表現する魔法の言葉は「ありがとう」です。「ありがとう」を知らない人はいませんが、職場で使っていない人は案外いるかもしれません。ちょっとしたことに対しても「ありがとう」を伝え合うようにするだけで、職場の雰囲気が変わります。

②「名前」を呼び合う

職場では、肩書だけではなく名前を呼び合うようにするだけで、コミュニケーションが進みます。「お疲れさま」もただ「お疲れさま」とだけ言うのではなく、「○○さん、お疲れさま」と伝えるだけで、労いの心が届きます。

③「雑談」をする

職場では、仕事の話だけではなく、適度な雑談も推奨しましょう。お天気、スポーツ、趣味、グルメ、旅行、健康、音楽、ファッション…。雑談でリラックスができると仕事にも集中できますし、共通項が見つかれば、関係性も深まります。

④目を見て話す「アイコンタクト」

相手と話をする時は、相手の目を見て伝えましょう。「ありがとう」も「よろしくお願いします」も、目を見て伝えることで、こちらの気持ちが伝わります。

⑤相手の話に耳を傾ける「傾聴」

相手の話を聴くことは、相手の心を共有することにもなり、信頼関係が深まります。普段から、相手の目を見て、うなずいたり、相づちを打ったりしながら話を聴きましょう。相手には「ちゃんと私の話を聴いてくれている」ということが伝わります。

 

執筆者

原 美聖 (はら みさと)
株式会社オフィシア 代表取締役

上智大学卒。JPモルガンにて資金為替部、グローバルマーケット部に勤務後、株式会社オフィシアを創業。官公庁、大手金融機関、一般企業向けに人事コンサルティング、研修を多数実施。これまでの研修受講者は累計35,000人を数える (2019年6月現在)。

官公庁・企業向けのコンサルティング、カウンセリング、研修を実施するかたわら、東京家庭裁判所非常勤職員 (人訴事件担当参与員) を務める。また、東京都若者相談 [若ナビ] 事業責任者、日本ゲシュタルト療法学会監査役を歴任。

資格

公認心理師、キャリアコンサルタント、シニア産業カウンセラー、EAPコンサルタント


 

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